会長挨拶

テーマ 『 ~つなぐ~ 』
1965年(昭和40年)に理学療法士・作業療法士法が制定されて以降、理学療法士は医療・福祉の領域に加え、近年では疾病予防・障害予防など保健領域においてもその専門性を発揮し、活躍の場を拡大してきました。そして現在、「頼られる担い手」として、高齢者や障がいのある方の「尊厳ある自立」と「活力のある地域社会の構築」に向けて邁進しています。
今回の学術大会を開催するにあたりテーマを「~つなぐ~」としました。理学療法(士)に求められている「~つなぐ~」とは何か、各自の立場に応じた「~つなぐ~」を考える大会になればと存じます。
【歴史をつなぐ】
本大会の開催にあたり開催都市を近代リハビリテーションのメッカとされる北九州市としました。1949年(昭和24年)2月、北九州市にある九州労災病院にてわが国初のリハビリテーション医療の先進的な取り組みが始まりました。1966年(昭和41年)に『労働福祉事業団九州リハビリテーション大学校」が設立され、その後2004年(平成16年)に閉校されましたが、その跡地は現在「日本リハビリテーション発祥地記念館・九州リハビリテーション大学校記念館」として、後世にその歴史をつないでいます。先人の足取りを辿る良い機会になればと思います。
【地域社会をつなぐ】
新型コロナウイルス禍で体を動かさない、人との会話が減るなどの生活が続き身体や認知機能に影響を及ぼし、介護が必要な一歩手前の状態「フレイル(虚弱な)」に陥る高齢者が増加しています。健康寿命の延伸のために、積み上げた身体能力と地域社会を取り戻すことが重要だと考えます。
さらに、国は急速に拡大する高齢化社会における費用対効果と自立支援を課題としその解決のために医療と介護の連携を謳っています。これは関係職種が速やかにチームを編成し、双方の隙間をつくらずスムーズに襷をつなぐことで地域社会における自立を実現することにあります。私たち理学療法士はこの実現に向け、地域包括ケアシステムの土台である「本人の選択と本人・家族の心構え」を念頭に、積極的に地域社会ならびに住民と密接につながり、「やりたい」ことの思いを達成できるための治療およびマネジメントを推進していくことが重要となります。
【理学療法士をつなぐ】
学術大会は互いに評価をする場を提供することにあります。理学療法の原点や現在求められている課題を議論し、その先に新しい発想や構想を生み出せる場であり、更には広く社会に向けての提言や態度表明を行うツールとして社会貢献という重要な役割を果たしていく大きな発信手段となります。いわば『理学療法士の顔』ともいえるかもしれません。今一度、学術大会の原点に立ち返り、世代を越えて活発な意見ならびに情報を交わし、理学療法の同志がつながる機会となれば幸いに存じます。
最後に、2019年(令和元年)に鹿児島県からスタートしました九州理学療法士学術大会も長崎県から福岡県にバトンが引き継がれます。リハビリテーションの陽は西から昇るという所以のこの北九州市の地で、「つなぐ」というキーワードをどのように捉え実践していくのかを焦点とし、理学療法の更なる発展の活力となる学術大会を目指していきたいと思います。
九州理学療法士学術大会2022in福岡
大会長 西浦健蔵